【Creator’s Talk】風景カメラマン 鶴木 雄太氏
専門技能を駆使して活躍するクリエイターにお話を伺う「Creator’s Talk」。第一弾となる今回は、その時・その瞬間にしか見られない絶景を写真に収めるカメラマンの鶴木氏にお話を伺いました。
【プロフィール】
鶴木 雄太 Yuta Tsuruki
スノーボードや登山が趣味という、アクティブな一面を持つ鶴木氏。本業はカメラの開発エンジニアとして勤務しながら、休日は趣味として様々な風景撮影を行っている。
きっかけは祖父のカメラ
ー 普段はカメラエンジニアとして勤務されながら、休日はカメラマンとして活動されているということですが、カメラマンとして活動しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
鶴木「きっかけは大学時代に祖父からもらった一眼レフカメラでした。祖父はカメラが好きで趣味として収集していたのですが、ある時、その祖父からカメラを一台もらうことになり、そこから撮影に興味を持つ様になりました。」
ー 一眼レフカメラを譲ってもらえたのは大きなきっかけですね。ただ、使い慣れるまで大変だったのではないでしょうか?
鶴木「確かに、周りの友人にもカメラに詳しい人もいなかったので、最初の頃はインターネットを使って独学で学んだり、祖父から直接使い方を教えてもらったりと、悪戦苦闘することが多かったですね。ただ、使い慣れてくるにしたがって、色々と撮影してみたいという意欲がどんどんと湧いてきたのも覚えています。」
本格的な風景撮影
ー 普段はどのような写真を撮影するのですか?
鶴木「主に風景を撮影しています。カメラ好きな友人と一緒に撮影に行くことが多いのですが、秘境のような場所を探しては撮影に行っています。」
ー 秘境とは、また行くのもハードルが高そうですね(笑
鶴木「大半の場合はそうですね(笑。例えば、車では行けないような山奥だったり、海外の人里離れた場所だったり。ここ2年ほどはコロナもあったので海外は全く行けてないですけどね。カメラ機材は基本重たいので、自分をアスリートと勘違いすることもあります(笑。」
ー カメラ機材を持ちながら山を登る姿を想像すると、高地トレーニングをしているアスリートにも感じますね(笑。絶景と言われるような景色を撮影する際は人里離れた整備もされていないような場所へ行かなければならないことも多々あるかと思いますが、そこまでして風景写真にこだわる理由は何でしょうか?
鶴木「目の前に広がる景色を撮影している時が一番楽しいと思えたからですね。趣味として撮影をしているところもあるので、写真を通して誰かに何かを伝えようというような高尚な想いはあまり無いのですが、その場所・その瞬間にしか出会えない景色を写真に収めている瞬間は無我夢中になれるので、それがモチベーションになっているのかなとは思います。昔は風景以外の被写体を撮影することもあって、それはそれで楽しかったのですが、風景を撮っている時の高揚感の方が勝っていたという感じですね。」
撮影事例紹介
ー 鶴木さんがこれまで撮影した事例をいくつかご紹介いただけないかなと思っているのですが、よろしいでしょうか?秘境にまで足を運ぶ鶴木さんの事例となると期待が高まります(笑。
鶴木「ハードルを上げられても困りますが、個人的に気に入っている事例をいくつかご紹介させていただきます。」
鶴木「こちらの写真は秘境ではなく、横浜での一枚です(笑。花火大会があった時に撮影したのですが、こちらの写真は合成になります。というのも、花火が上がっている最中は手前の観覧車が消灯してしまうため、花火が終わった後に画角をそのままに、観覧車が点灯している写真を撮影しました。その後に、観覧車が点灯している写真と花火の写真を合成して、こちらの写真を作成しています。花火自体はこの写真通りの迫力がありましたが、観覧車の彩も加わると、より写真が映えてくるので気に入っています。」
鶴木「2枚目の写真は、ケニアのナイロビ国立公園を訪れた際に撮影した一枚です。背景に建物が見えることから分かると思いますが、この公園は人の生活域と隣接しています。しかし、この公園は動物保護区でもあって、写真に写っているキリンをはじめ、サバンナで見られるような野生の動物が数多く生息しています。日本では考えられないような環境ですが、それ故に野生のキリンと建物といった特殊な組み合わせを撮影することができました。」
鶴木「3枚目の写真は、テントを入れた星空を撮りたくて撮影した一枚です。八ヶ岳にある場所ですが、天の川を見られるという情報があったので、撮影に行きました。実は、この写真も合成です。手前のテントが明るいため、テントを綺麗に写す設定にしてしまうと星が綺麗に写らなくなってしまいます。また、星を明るく撮ろうとすると、手前のテントが飛んでしまうという課題もありました。そのため、山の稜線を境に、テント側の撮影と星空の撮影で設定を分けて撮りました。天の川も綺麗に収めることができたので、こちらもお気に入りに写真です。
ちなみに、星空を撮る時は『スターウォーク』というアプリがオススメです。指定した場所で、何時頃にどのような星空が見られるのかが簡単に把握できるので、撮影スポットを予め決めておく上でとても重宝しています。」
鶴木「4枚目はヒメボタルを撮影した時の一枚です。日本では3種類くらいのホタルがいますが、このヒメボタルは短く点灯するように光る特徴があるので、飛んでいるホタルを撮影しても線ではなく点で写ります。ただ、ヒメボタルの撮影スポットを探すのは一苦労でした。人が密集するのは避けた方が良い生き物だったりもするので、ネット上にも具体的な位置情報までは公開されていないことが多いです。そのため、この写真を撮影した時は、出そうな場所を予め特定しつつ、ヒメボタルの主な活動時間は夜中の12時以降ですが、昼間から現地に訪れ、ロケハンをしながら撮影スポットを定めました。
ヒメボタルが飛んでいるところを撮影できる期間はおよそ2週間ほどと言われています。また、雨上がりなどの湿気が多い気象条件であるほど活発に飛び回るようなので、タイミングもかなり重要な撮影でした。」
鶴木「5枚目は、奈良県の蕎麦畑で撮影した一枚です。実は、もともとは別の撮影目的で訪問していたのですが、朝の気候の条件などが合いそうだということもあり、急遽この場所を訪れたら大当たりだったという感じです。蕎麦畑は車で30分ほどかけて行く様な標高の高い場所にありますが、そのおかげで背景の山々も綺麗に収まり、幻想的な一枚になっています。」
鶴木「6枚目は、ニセコスキー場の近くで撮影した一枚です。この場所は宿泊した施設の近所にある場所でしたが、Googleマップを見ていたら、ちょうど道路の下を電車がくぐり抜けていくようなスポットを見つけたので、早朝に始発電車を狙うタイミングで撮影をしました。撮影スポットとして有名になっているような場所ではないので、ここは本当に穴場だと思います。条件が良ければ背景に羊蹄山(ようていざん)も現れるので、まさにオススメの撮影スポットです。」
鶴木「最後の事例は、蝶ヶ岳の頂上で撮影した一枚です。朝に一瞬だけモヤが晴れて朝日が綺麗に見られる瞬間があるということで狙いに行きました。テント泊でその一瞬が来るのを待ち撮影をしたのですが、登山道具と撮影機材を運びながら現地に向かうのは一苦労でした。ただ、そこまでしてでも撮影して良かったと思える景色を拝めたので、思い出の写真です。」
Photos by Yuta Tsuruki
編集後記
今回の鶴木さんの取材で感じた印象の中で一番大きなものは、「趣味の範疇を超えている」ということでした(笑。撮影の苦労話や事例を見させてもらいましたが、カメラマンを本業にしているとしか思えないような内容でした。まさに、やるからにはとことん求めるものを追求するという、職人気質な方なのではないかと思います。
そんな鶴木さんですが、これまで実際に撮影で訪れた撮影スポットを紹介するブログを始められたそうです。本来、こういった撮影スポットは隠しておきたいものだと思いますが、ブログを見るとオープンな内容に驚かされます。しかも、紹介している撮影スポットは全て鶴木さんが実際に訪れたことのある場所なので、鶴木さんならではの視点で解説されたポイントなども参考にできるかと思います。ぜひこちらもご覧になってみてください。
また、鶴木さんへの撮影のご依頼はInstagramのダイレクトメッセージ(DM)にて受付しているので、ご依頼の際は下記のInstagramをご参照ください。